『布とつくる のびやかなココロとカラダ』
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幼い記憶・7
小学校に上がる少し前、隣にかよちゃんが引っ越して来た。
かよちゃんは1つ年上で、目が大きくて色が黒くて、
エキゾチックな顔立ちをしていた。
弟と妹がいるお姉ちゃんだったからか、とても大人びていた。
お母さんはハキハキした活発な人で、おっとりした私の母とは
なぜか気が合った。私たち家族はすぐに仲良くなった。

かよちゃんはよく気がつく優しい子だった。
私が知らないこともいっぱい知っていて、遊んでいると楽しかった。

ある日、公園でブランコに乗っていると、ようこちゃんがやって来た。
「まゆちゃん、私とかよちゃんのどっちが好きなの?」

答えられなかった。
かよちゃんはかよちゃんで、ようこちゃんはようこちゃんなのに、
そんなことを聞かれても答えようがなかった。

「言えないなら、ここに名前を書いて!」
土に文字を書くための棒を渡された。
私は棒を持ったまま、ずっとその場に立っていた。
浜からの風に揺れるブランコの、ギリギリと錆びた音が響いた。
あたりはだんだんと薄暗くなっていった。

かよちゃんが私の耳元で言った。
「まゆちゃん、"ようこちゃん"と書いておうちに帰って」

そうすれば、ようこちゃんの気がすむことはわかっていた。
だけど、かよちゃんの前で嘘をつくのは絶対に嫌だった。
いっそのこと"かよちゃん"と書いてしまおうか・・・・
でもそんなことをしたら、ようこちゃんを深く傷つけてしまう。
私はいたたまれなくなって、その場から逃げ出した。

家に帰って少しして、ようこちゃんが1人で家に来た。
「おばちゃ〜ん、まゆちゃん帰ってる?」
私は母に「出たくない」と言った。
ようこちゃんは帰って行った。

「どうしたの?けんかしたの?」

「なんでもない」

その後も母は私に何も聞かなかった。
この複雑な気持ちは、誰にも説明することができなかった。
| mayu | 幼い記憶 | 08:39 | comments(3) | trackbacks(1) | pookmark |
幼い記憶・6
きよみちゃんは、ずっと赤ちゃんだった。
いつも乳母車に乗せられていたから、赤ちゃんだと思っていたけど、
本当は私と年が1つしか違わなかった。
先天性の病気で、立つことも歩くこともしゃべることも
一生できないのだと言われていた。

きよみちゃんは、家の前でよく日なたぼっこをしていた。
「おばちゃん、きよみちゃんとお散歩していい?」
体が小さい私では乳母車を押すことができなくて、
同い年だけど大きいゆうちゃんと、ゆうちゃんのお姉ちゃんに
押してもらって、4人で時々お散歩をした。

潮風とお日さまの中で、ニコニコと笑うきよみちゃんを見ていると
とても幸せな気持ちになった。

何羽ものカラスがぐるぐると空を飛んでいる薄暗い日、
きよみちゃんのお父さんは海の事故で亡くなった。
丸顔で、髪の毛がくりくりしていて、いつも朗らかだった
キューピーさんみたいなおじちゃんの顔を思い出した。

何日かたって、きよみちゃんとお母さんは引っ越して行った。
実家へ帰ったのだと聞いた。
私はもっときよみちゃんと遊びたかったのに、と思った。

「なんであの家には不幸なことばかり起こるんだろうねー」
大人たちはそう言った。

お父さんが亡くなったのは不幸なことかもしれないけど、
病気のきよみちゃんは不幸なのかな。
きよみちゃんと遊んでいると幸せな気持ちになれるのに、
どうして「不幸」だと言うのか、わからなかった。


−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 11:54 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
幼い記憶・5
しのちゃんは、その日お姉ちゃんになった。
ある日突然、どこからか赤ちゃんがやって来たのだ。
赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんじゃないことぐらい
私にもわかっていた。何か変だな、と思った。

2つ上のお兄ちゃんと3つ上のお兄ちゃんとしのちゃん。
3人だった兄弟は4人になり、5人家族は6人家族になった。

母としのちゃんのおばちゃんが話していた。

「よく決心したね。なかなかできることじゃないよ。」
「だって、この子には何の罪もないもの。赤ちゃんはかわいいもの。」

赤ちゃんは、おじちゃんとは血がつながっていたけど、
おばちゃんとは血がつながっていないようだった。
それでもおばちゃんは、自分の子供として赤ちゃんを引き取って育てた。

赤ちゃんは本当にかわいかった。
「私の弟よ。かわいいでしょ。」
しのちゃんが抱っこしているのもよく見かけた。
家族みんなで大切に育てていた。

赤ちゃんはどんどん大きくなり、
歩いたりしゃべったりできるようになり、
顔はだんだん一番上のお兄ちゃんに似てきた。

温かい家族で、そこには温かい空気が流れているはずなのに、
赤ちゃんが大きくなればなるほど、私は悲しかった。


−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 08:29 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
幼い記憶・4
「今日はみつる君のお父さんがテレビに出るからみんなで見ましょう。」
幼稚園に1つだけあるテレビの前に、先生と子供たちが集まった。

天井からぶら下げられたテレビは、
子供が見るには難しい位置だったけど、
友達のお父さんをテレビで見るなんてことは初めてで
みんなわくわくしていた。

始まった。
女の人がみつる君のお父さんに、いろいろ質問していた。
子供にはさっぱりわけのわからない話で、すぐに飽きてしまった。
でも私にはたった1つだけ、忘れられない言葉があった。

「私には指が一本足りない。指が一本欲しい。」

家に帰って、母に聞いた。
「みつる君のお父さん、けがしたの?」

みつる君のお父さんは、物を書く仕事をしている人だった。
一度体を壊してから、外で働けなくなったのだということも聞いていた。
そのテレビ番組は、お父さんの詞を取り上げての対談だった。
話の内容はわからなかったけど、インタビュアーの質問に答えている
お父さんの表情から、真剣な話なのだということぐらいは、
子供の私にも理解できた。

「あのね、指が一本足りないというのは、
指が本当にないということではないのよ。」

その日、私は初めて部落差別ということを知った。
部落の人に対して、そういう言い方をすることも知った。
でも私にはわからなかった。

「みつる君のお父さんは何か違うの?」
「何も違わないよ。お父さんもいい人で、お母さんもいい人で、
みつる君もいい子でしょ?それでいいじゃない。」

本当にそれでいいと思った。
それ以上のことはわからなかった。


−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 10:45 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
幼い記憶・3
幼稚園の帰り、私とよっちゃんは
りさちゃんの家に遊びに行く約束をした。
しっかり者のりさちゃんは、クラスでもお姉さん的な存在で、
先生のお気に入りだった。
背が高くて髪が短くてボーイッシュなところが、
リボンの騎士のサファイア王子に似ていた。

りさちゃんの家は幼稚園から一番遠いところにあった。
背の順に並ぶと1番前がよっちゃん、2番目が私。
小さい2人は歩くのが遅く、思ったより時間がかかり、
約束していた時間に少し遅れてしまった。

「あんたら、なんで遅かったん?」
「私らと遊びたくなかったん?」

りさちゃんと、その傍にいつも家来のようにくっついていた
きみちゃんが言った。
遅れて行ったことは悪かったけど、遊びたくなかったわけじゃない。
でも怒っている2人の顔を見ると、そのことがうまく説明できなかった。
2人は私とよっちゃんを、土の上に座らせた。

「罰として土を食べなさい!」

何を言われているのかわからなかった。
ほんの少し遅れたことが、罰を受けるほど悪いことだとは思えなかったし、
どうしてそんなことを思いつくのかもわからない。
それに、ばい菌がいっぱいの土を食べるなんて絶対に嫌だった。

帰ろうと思った。
もしもずっと口を利いてくれなくなっても、帰るつもりだった。

隣にいたよっちゃんが、泣きながら土を口に入れた。
りさちゃんはそれで気がすんだのか
「まゆちゃんは食べなくていいよ」と言った。
2人とも遅れて行ったのに、私だけ土を食べなくてすんだ。

重い空気の中、少しだけ遊んで家に帰った。
帰り道、2人とも土を食べたことはひと言も話さなかった。
私はよっちゃんに何を言っていいのかわからなかった。
いろんな気持ちが私の中でぐるぐる回っていた。

次の日、幼稚園に行った。
りさちゃんときみちゃんは、何事もなかったかのように
私に話しかけてきた。よっちゃんにも普通に話しかけていた。
でも私は、よっちゃんとはそれから何日も遊べなかった。


−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 13:44 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
新カテゴリー
「幼い記憶」というカテゴリーを作りました。
シリーズにするつもりはなかったんだけど、
Y子ちゃんのことを書いているうちに、
他の子のこともいろいろと思い出してしまって・・。

私が幼稚園〜低学年の頃に感じたことを
"人権"をテーマに書いてみたいと思います。
家族関係、いじめ、部落差別や人種差別、DVなどなど取り混ぜて。
けっこうハードな内容だなぁ〜。
人んちのことを、こんなに書いてしまっていいのだろうか?

すでに10話まで書いてしまったよ。
創作じゃなく記憶をそのまま文字に書き写してるだけなんで
スラスラ書けちゃって、あまり時間がかからないんだよね。
年末のこの忙しい時期に、な〜にやってんだか。
一気に書いたから、一気にUPしようかなとも思ったけど、
もったいぶって1日1話ずつ小出しにすることにしました。

こういう話、毎日続くと疲れるので
シリアスドラマの合間に流れる雰囲気ぶちこわしCMのように
時々おちゃらけた記事を挟んでいくつもりです。

では、お付き合いよろしくーー!

* 1・2話のY子ちゃんは今後もイニシャルだと書きにくいので、
 ようこちゃん(仮名)に変更しました。
| mayu | 幼い記憶 | 08:20 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
幼い記憶・2
ようこちゃんはいつも綺麗なお洋服を着ていた。
部屋にはふわふわのベッドがあり、
私が買ってもらえなかったリカちゃんも2人いた。
いずみちゃん、わたるくん、双子の妹ミキとマキという小さい人形、
リカちゃんハウスは3つも持っていた。
でも私に貸してくれるのは、いつも一番古いハウスと小さい人形だった。

「ぜ〜んぷパパとママが買ってくれたの〜」
あふれかえるほどのおもちゃを並べて自慢してたけど、
ちっともうらやましくはなかった。
何かが欠けていると感じていた。

その頃、自宅で誕生会を開くのが流行っていた。
母がお料理好きだったこともあり、私たち母子は
張り切ってメニューを考え、ゲームの企画を練り、
沢山のお友達を呼んだ。
もちろんようこちゃんも誘った。でも来なかった。
それなのに彼女は、自分の誕生日には私を呼んだ。
招待客は私1人だった。

「おばちゃん、あまりお料理得意じゃないから
こんなものしか作れなくてごめんね。」
出されたものは、誕生会の華やぎのない普通のご飯だった。
それでも、ようこちゃんと私のために
一生懸命作ってくれたのだと思うとうれしかった。
「まゆちゃんのお母さんは、お料理上手でいいね。」
「ようこちゃんちのご飯だっておいしいよ。」
それから時々、ようこちゃんのうちでご飯を食べるようになった。

ようこちゃんは養女だった。
そのことは本人も知っていたし、ご両親も特に隠してはいなかった。

「だって!本当のパパとママじゃないくせにー!!」
ようこちゃんのこんなセリフを、私は何度も耳にしていた。
おじちゃんもおばちゃんも、とても優しい人だったし、
彼女のことをかわいがりながらも、時には厳しく叱り、
きちんと育てているのに、どこかギクシャクしていた。

ある時私はようこちゃんに言ってしまった。
「それは本当のママじゃないから?」
何の悪気もなく傷つけるつもりもなく、普通の会話の中でのことだった。
ようこちゃんは下を向いてポロポロと涙をこぼし始めた。
それは言ってはいけないひと言だった。
いつもは自分で言ってる言葉でも、人から言われると
傷つくのだということを知った。

−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 10:57 | comments(5) | trackbacks(0) | pookmark |
幼い記憶・1
私の幼い頃の写真、隣にはいつもようこちゃんがいる。
家も近くで幼稚園も一緒。毎日のように遊んでいた。

だけど、私はようこちゃんが嫌いだった。
背が高くて色白で目がぱっちり、艶々した長い髪で
美人を絵に描いたような子。その上強烈にわがままで
"鼻持ちならない"という言葉がぴったりな子だった。

「ようこはまゆちゃんのことが気に入ってるから仲良くしてやってね。」
彼女のお母さんも、自分の娘がわがままで
友達ができないことはよくわかっていた。
私は幼いながらにも、どこか義務感のようなものがあり
毎日彼女の家に遊びに行っていた。

いつも命令口調で私にいろいろと指図する。
それほど嫌だと思っていたわけではなかったけど、
彼女のひと言で、ある日とうとう私の限界が来た。

「私は大きくなったら女優かスチュワーデスになるの。
まゆちゃんはチビだから無理だよねぇ、あはは・・」

女優にもスチュワーデスにも全く興味はなかったけど、
事あるごとに「チビだから」と言われてきたことと
人を小バカにしたような笑い方に腹が立った。

「私はなれないだろうけど、ようこちゃんもなれないよ。
だって背が高いだけで、中身すっからかんだから。」

一瞬ようこちゃんの顔がこわばった。
美人でちやほやされてきた彼女にとって、
人からそんなことを言われたのは初めてだっただろう。
しかも、それを言ったのは、今までずっとおとなしく
自分の思いのままに動いてくれてたまゆちゃんだった。

しばらくの沈黙の後、彼女は泣き出した。
声を上げて泣いている彼女を無視して、私は家に帰った。


−−つづく−−
| mayu | 幼い記憶 | 17:22 | comments(5) | trackbacks(0) | pookmark |
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